ルパン三世になりたくないおっさんのためのスーツはないのか

必要があって夏物のスーツを買いに行った。もちろん、最近雨後の竹の子のように都内のあちこちにできているおおしゃれめ? スーツ量販店の吊るしである。

普段、幸いなことにスーツにもネクタイにも疎遠な生活を送らせてもらっている私だが、最近の機能性スーツは特に夏に快適さが断然違うと聞いて、近く要する機会があるのでそれを見に行ったわけ。しかし、機能に驚かされるというより、形に驚かされるというか、あやうく買う気を喪失して帰るところだった。

なんなのかね、あの細いスーツは。そういえば、最近電車でも社内でも若者たちはこぞってルパン三世みたいなかっこうになっているとは思っていたが。まぁ、スーツにも流行廃りがあるのだろうが、私はモードには何の関心もないので、また、モードに合わせて服に金をかける趣味もない。私は、服に金をかける人というのがよく理解できないしちょっと信じられない(もちろん風花のことも理解できないし、信用していない)。我が道を行きたいのだが、スーツ量販店でそれが阻まれそうになって焦った。細身スーツばっかりなんだよ。ルパン三世な若者とそれ以外のおっさんというカテゴリーの二分化なのね、はい、じゃぁおっさんスーツ出してくださいと頼んだのだが、試着してみて、やっぱり細いんだよ。私が太ているのが悪いのか? たしかに年相応におっさん体型だが、メタボでもないし、昔の標準的おっさんスーツなら余裕でOKだったはずなのだ。推測するに若者のモードに合わせて、おっさんスーツ界の標準も細身傾向に引きずられているのではないか。しかも、色柄も理解に苦しむものが増えている。黒(あるいは濃いチャコールグレーなのか?)に白っぽいシルバーのピンストライプとか、私からするとおしゃれすぎて(軟派すぎて)仕事に着ていくには妙に気分が落ち着かないのである。昔懐かしいドブネズミスーツはどこにあるんだ? まさかドブネズミスーツくださいとも言えないので、あれこれ細かい文句をつけてなるべく地味で太めのスーツを探してもらい、それでも完全に納得したわけでもないのだが、いい加減疲れたので、「それでいいです」ということになった。

今年の春先にNHK白洲次郎ドラマが放映されて、「イングリッシュ・ドレープ・スーツ」というコトバがにわかに注目されてるんだって。と風花から聞いたのを思い出したが、昨今のアメリカ的(?)細身スーツ一辺倒のスーツ業界には少し再評価してもらいたいと、ファッション音痴の私も思った今日であった。もちろん白洲次郎伊勢谷友介並に着こなせるなどと思っているわけではないが、ルパン三世ではないオルタナティブの必要性を身にしみて感じたし、選べというならイングリッシュ・ドレープ・スーツが着たいと思う。風花には似合わないと思うと言われた。もちろん。

by おじこ