皆既日蝕

空を見上げもしないうちに終わっていた。


そういえば、子どもの頃、私は完全に「怪奇日蝕」だと思い込んでいたのでした。
そして、怪奇日蝕の時間帯には、世界中でたいへん禍々しいことが多数起るのだと恐れてしました。


思い出すのは、小学生の頃友だちと観に行った映画「レディホーク」。


舞台は中世ヨーロッパ(たしか北方ゲルマン地方)。横恋慕した邪悪な主教の呪いによって、昼の間鷹に姿を変えられてしまったレディ(ミシェル・ファイファー)と、彼女の恋人でやはり呪いによって夜の間狼に化身させられてしまった騎士(ルトガー・ハウアー)。日没と日の出の一瞬だけ、互いに人間の姿の相手を垣間見られるのだけど、指を触れ合わせようとする瞬間にはもうどちらかが獣に変身してしまう……せつない! さすらいの旅を続けるふたりに詐欺師(だったかしら)の少年(マシュー・ブロデリック)が力を貸して、ついに皆既日蝕の日、騎士は主教に復讐を挑む。そして皆既日蝕の瞬間呪いは解け……


皆既日蝕、すげー! と思ったです。世界中で秩序の崩壊や凶事が連鎖的に起ると思ってたけど、こんなロマンティックなストーリーも生まれるのかぁ、と感心しました。やはり、皆既日蝕は怪奇な現象だ、と。何もわかってなかったあの頃、楽しかったな。


by風花